さて、前篇では効率的にスキル習得をするためのポイント8項目のうち4項まで紹介しました。
今回は続きを紹介していきます。
なお前篇はこちらをご参照ください。
2.練習は自分の能力を少し超えた負荷に設定すること
3.練習には全力で集中して取り組むこと
4.即座にフィードバック(または振り返り)を受けて、修正を継続すること。
5.心的イメージを磨きあげよう
6.結果が停滞してきたら、別のやり方でトライしよう
7.苦しい練習を継続できる環境を整えよう
8.練習は創意工夫をしよう
心的イメージを磨きあげよう
心的イメージとは?
なぜ、野球選手は反応速度よりも高速なボールを撃ち返すことができるのか?
なぜ、チェスや囲碁のプロは一見しただけで優勢を判断できるのか?
こんな疑問を持ったことはないですか?
本著の中では、これは心的イメージが高度に作り上げられているからだと説明しています。
本の中では心的イメージはスキル習得において重要な要素であり、以下のように表現しています。
脳が今考えているモノ、概念、一連の情報など具体的あるいは抽象的な対象に対応する心的構造のこと。
事実、ルール、関係性などの情報がパターンとして長期記憶に保持されたものであり、特定の状況に迅速かつ的確に反応するのに役立つ
ハッキリ言って説明文だけですと難解なので、本の中の紹介事例をもとにイメージしてもらうと理解しやすくなるでしょう。
・タクシードライバーの場合
⇒ 運転する際に次の地点に効率的に移動するために思い浮かべる心象地図
・水泳選手の場合
⇒ 早く泳ぐためにイメージする理想的なフォーム
・ロッククライミングの場合
⇒ 次のホールドに最適なグリップ(指の握り)の形
・チェスや将棋(アメフト、サッカーも含む)
⇒ 現状の優劣判断、次の局面の予想
このように心的イメージは、その競技やスキル特有に様々な様式になるのが特徴です。
私たちも普段から、特に意識せずともアクセル、ブレーキを踏んで自在に運転できています。これも心的イメージが形成されているために出来ることです。
限界的練習により、肉体は不可に適応しようして変化していきます。ですが、同時に心的イメージが形成されていないと、変化した肉体を上手く扱えません。そのため、心的イメージの形成は非常に重要となります。
心的イメージにはどんなメリットがあるの?
心的イメージは非常に重要だと紹介しましたが、どんなメリットがあるのでしょうか。
本の中では次のように紹介されています。
・スキル・競技における情報処理や判断が早くなる
・内的フィードバックにより自身のミスに気づきやすくなる
超一流のアスリートが持つ心的イメージの特徴は、一見ランダムに見える局面の中でもパターンを見出せることです。そのパターンをストックしておくことで、瞬時に状況を認識して、次の局面予想がより正確になります。
また、自身の理想パターン(動きや演奏など)をより鮮明に持つことで、自身の練習をモニタリングすることが可能となります。心的イメージが優れていると、課題の特定や効果的な練習方法を見極めることが出来るようになるそうです。
心的イメージはどうやって形成するの?
では、その心的イメージですが、どのように作り上げていけばよいのでしょうか?
答えは単純で、心的イメージは1~4まで紹介した限界的練習によって形成されるのです。
限界的練習と心的イメージの二つは、互いに密接な関係にあるため、ともに発達させていくことが重要です。
ということは、練習は漫然とするのではなく、(基本動作であれば)理想的な動きは何か?、(対人競技であれば)自分の有利な局面にするにはどう動くか?といった目的を常にイメージし続けることが大切なんだということなんですね。
結果が停滞してきたら、別のやり方でトライしよう
何事においても成長曲線というものがあり、必ずどこかで頭打ちになるときがあります。
そのような停滞期に入った場合は、他のやり方を試してみるのがよいでしょう。
というのも、スキル上達というのは脳と身体に適応を強いることであるため、ある程度継続するとその負荷に慣れてしまうという事態になります。
その場合、通常と異なるアプローチのメニューでトレーニングすることで、新しい刺激を加えるのが有効ということです。
4項(フィードバック)において、指導者の存在の重要性について紹介しました。指導者がいると、頭打ちになったときに最適なトレーニング方法を提案してもらえるのが強みです。
この時の注意点としては、やり方を変えるにしても、現状の自分の課題が何であるか、それを克服することが重要なので適当にやってはいけません。まずは、何が足を引っ張っているのかを特定してからメニューに変化を加えましょう。
苦しい練習を継続できる環境を整えよう
世の中には超一流になるためには『一万時間の法則』という有名な法則があります。
エリクソン先生はこの法則はデータ解釈に誤りがあり、実際はもっと少ないはずとの否定的な見解を述べていますが、それでもやはり超一流になるには膨大な練習時間が必要であるという部分は同意見となります。
集中力の項でも書きましたが、限界的練習は楽しくなく、むしろ苦しいものです。しかし、超一流となるプレイヤーは苦しいと自覚していても、続けるメリットを見出し練習を継続させる仕組みを作っています。
・練習を継続させるには、”意志力が強い人はいない”という前提に立ち、仕組みを作る。
・そのためには決まった練習時間を設け、他の仕事や注意散漫になる要素を全て排除することが有効。
本の中では仕組みづくりについて次にように紹介しています。
・時間が取れない時
⇒ スケジュール管理をしっかり行い、練習の時間を確保しましょう。
・集中できない時
⇒ 集中の妨げになっている障害を見つけ、その影響を最小限にしましょう。
・やる気が維持できない時
⇒ 誘惑にかられるものは目につかないようにしましょう。
⇒ 自分の努力を肯定し、応援してくれる仲間を見つけましょう。
⇒ 自分の上達具合を(数値化など)可視化してみましょう。
時間確保は世の中の社会人に共通の悩みですよね。本の中でも、成績優秀な音楽学校の生徒は前もって練習時間を確保したうえで、日々のスケジュールを組んでいることが分かりました。
そのためには、『やるべきこと』『やらないこと』を決める必要があるでしょう。
集中力は様々な雑誌でも紹介されていますが、集中するには環境づくりが必要となります。
スマホなど集中の妨げになるものは電源を切る、目の届かないところに置いておくなどしましょう。
モチベーションの維持は、スキル習得の上で最大の課題となります。意欲を向上させるのに強力なのが”認められたい、褒められたい”といった他者からの承認と尊敬をもらうことです。そのためには努力を勇気づけ、支援し、励ましてくれる仲間を持つことが最適です。
意欲向上にもう一つ重要なのが、自身が練習することでトップクラスになれるという自己を信じる強い気持ちを持つことです。そのためには自分の上達具体が分かるようになっていることも大切です。
練習は創意工夫をしよう
1~7まで限界的練習の要素を上げましたが、各課程においても自らの創意工夫は必要です。
1~7項まで読んでいて、こんな悩みをもっていませんか?
フィードバックを受けるのが重要だとあるけど、いきなり指導者なんて見つからないよ!
(英会話など)他の人がいないと練習できない場合はどうすればいいの?
このように、皆さん個々に現状に即していない部分があると思います。
エリクソン先生もそれは想定済みであり、そのような場合は創意工夫により補うことが可能であると説明しています。
特に、指導者がなく独学で習得するときには3つのF(下記)を心掛けることが重要です。
②フィードバック(Feedback)
③修正(Fix)
独学の場合”②フィードバックをいかに受けるか”ということが問題になります。
本の中では参考例として次のような事例が紹介されていました。
・ベンジャミン・フランクリンの独学法
①自分が参考としたい文章を選び、最低限のヒントだけ残す。
②時間をおいて忘れた頃に自身で文章を再現し、原文と同レベルの質であるか比較
③比較結果から自分の課題(不足分)を把握する。
⇒ フランクリンは、この方法で自分には語彙力が不足している(課題)と気づき、
詩を勉強する(修正)ことで文章を上達させた。
・英語の勉強方法
①映画を字幕なしで観て、会話を理解する。
②同じ映画を字幕つきで観て、自分の理解が正確であったか確かめる。
⇒ 同じセリフを繰り返し聞くこと、自分の理解度やリスニング能力を向上する
上記の参考例を見ていくと、
・見本(理想)を用意する。
・自身のパフォーマンスと比較する。
・差が生じる部分を課題として抽出する。
といった方法でフィードバックを得ています。
最後に
なお、今回紹介した本は上記以外にも下記のような役立つ内容も載っています
気になった方はぜひ、ご自身でも手に取ってお読みください。
・検証した結果の詳細データや解釈
・過去の天才たちの生い立ちや練習方法の詳細
・自分の子供を超一流に育成したいときの注意点
・自分たちのビジネスへの応用するには
また、参考になった部分はスポーツ、学習への応用に最適であるため
どんどん実践して血肉にしていくのがおススメです。
僕は今回の調査結果をもとにトレーニングを続けていきます!!